パーティ ケータリングが伝えたいこと
「社会の安定帯」・「労使協調・相互信頼関係」・「社会の安定帯」つまり「社会秩序の維持」なしには、市場原理を徹底できない、ということだ。
たくみに労働者の抵抗をやわらげつつ、「市場原理の徹底」をおこなおう、という魂胆である。
以上から、「ダイナミックで徳のある国」という表現のうち、日経連がなんとしても実現したいのは「ダイナミック」の部分であり、「徳」は労働者対策の「毛ばり」にすぎない。
これにひっかかるつぼと、経営者の思う壷ということである。
2つの「毛ばり」のうち、まず「雇用の安定」を、つぎにみよう。
1990年代になって失業率が上がりはじめ、98年から4%台になっている。
今日のような統計をとりはじめた53年いらい、それは最悪の数字である。
失業率だけでなく、パート、派遣などの不安定雇用労働者もふえているPそして今後、パートもふくめて雇用リストラが拡大する情勢でもある。
高卒・大卒など新卒の就職状況も悪化し、とりわけ女性にきびしい。
こうしたなか、新卒者がいきなり派遣労働者になるケースもでており、今後これがふえる情勢でもある。
管理職をふくむ中高齢労働者にたいする雇用リストラもいっそうきびしくなっている。
このような情勢は支配層にとっても、支配の維持の観点から、放置できないはずである。
失業増は「社会不安」の最大の要因だからである。
この観点から日経連も「雇用を重視する」として、「報告」でも一定の方向をうちだしている。
まず、それをみてみよう。
第一に、「景気の早期回復」をあげている。
言葉のかぎりで、それが失業対策となりうることは、いうまでもない。
問題は内容である。
日経連は「景気対策」として、銀行救済のための「金融システム改革」や、法人税・高所得者中心の減税などをあげている。
消費税率の引き下げなど個人消費を浮揚させる有効な政策にたいしては背をむけている。
日経連の「景気対策」そのものが景気対策になっておらず、これでは景気対策で雇用をふやすというシナリオ自体が破産している。
第2に、「新規事業・新産業の早期育成などによる雇用創出」をあげている。
15分野で740万人雇用創出計画の「前倒し実施」をおこなう、という。
住宅、情報・通信、環境、福祉・医療の4分野で2000年までに309万人の雇用創出をおこなう、としている。
これは従来の日本経済を代表する産業(自動車・電機など)から、新規の右のような産業に一雇用を流動化させるという構想である。
だが、すでにはっきりしているのは従来型産業から労働者が大量に排除・追放されていることであって、それらの労働者が新規の産業に吸収されるほうは日経連などの願望におわっている。
日経連のいう「2000年までに309万人」は夢物語であるが、かりにそれに近い数字が実現したとしても、それは不安定雇用の増大としていることを銘記すべきである。
第3に、「労働市場の環境整備」をあげている。
これはズバリ労働力流動化の促進である。
まず、「改正派遣法・職安法の早期成立による柔軟な需給調整」が強調されている。
これは労働法制改悪による労働力流動化のすすめである。
ついで、「人材ネットワークの拡充による需給ミスマッチの解消」を主張している。
これが民間職業紹介事業などをさすことは指摘するまでもない。
いまひとつ、「円滑な労働移動を可能にする退職金・年金制度の見直し」も指摘している。
これは年功賃金の年俸制化など「成果主義賃金」への切り替えをふくむ「長期雇用」解体策で、とくに中高年がターゲットであり、結局、雇用対策にはならず失業創出策になる公算のほうが大きい。
第4に、「雇用される能力(エンプロイヤビリティ)の向上」をあげている。
そのために、「職業転換、ベンチャー挑戦のための学校教育、生涯教育」の促進をあげ、また「学校・公共施設の情報システムの地域開放」を強調している。
結局、日経連のいう「エンプロイヤビリティの向上」は、ひとつには現在の職場での搾取強化をねらっているが、それ以上に現在の職場をやめさせやすくするところに、つまり再就職のために腕をみがかせるところに最大のねらいがある。
これまた労働力流動化の促進ということだ。
付言すれば、これは最近の「自助・自立」論の特徴であり、もう国はめんどうをみないから、自分で力をつけろ、腕をみがけ、というものである。
日経連の立場にたつ人びとは、これをもってセーフティネットだと強弁している。
第5に、「高齢者雇用の促進と関連する社会保障改革の推進」をあげている。
これは要するに、「社会保障改革」という名の年金改悪などで、高齢者を労働市場に強引に囲い込み、嘱託などさまざまな名称による契約制の不安定・低賃金労働者として利用しようというものである。
日経連など財界は、高齢者を一雇用リストラで個々の企業から排除しているが、高齢者全体と縁を切る考えではない。
それでは企業がなりたたない。
企業は高齢者も必要なのだ。
かれらの課題は、高齢者をいかに安く使うか、である。
そこで高齢者に企業を転々とさせ、つぎつぎと買いたたきながら使う、つまり企業同士で「高齢者のキャッチボール」をし、だんだん賃金を下げていく、という手口である。
むろん経営者の目による選別をともなう。
低賃金の職場さえ確保できない高齢者が存在することになる。
以上の5点を日経連は「雇用対策」・「雇用安定策」というが、その本質は「労働力流動化」であり、これと一体の「雇用形態の多様化」にほかならない。
日経連のいう「雇用の安定」とは、現在の職場が確保されることではない。
逆に、労働者が現在の職場に固執すると失業する、という。
つまり労働者は、現在の職場の事業内容が変化しそうな状況を素早く察知し、積極的につぎの職場にみずからを流動化させなくてはならない。
そうすれば一雇用が守られる、という論理である。
このような流動化にもっとも好都合な一雇用形態は「契約制の雇用」である。
日経連が95年の報告書「新時代の「日本的経営」」で提起した雇用形態の3グループのうち、第2〜第3グループがもともと流動的である。
したがって、労働力の流動化は、雇用形態を多様化し不安定雇用をふやすこととメダルの裏表の関係にある。
一つのことの両側面なのだ。
リストラと規制緩和に歯止めをかけないかぎり失業はふえる。
これはだれもが知っている常識だ。
日経連傘下のほとんどの中核企業は、その逆の方向である。
リストラを1999年〜2000年にエスカレートさせる方針である。
たとえばTのN社長は、99年の年頭あいさつで「今年は変化を実践する年にしたい。
米G(G)が10年かかった改革をTは1〜2年でやり遂げよう」と徹をとばし(「Nビジネス」99年1月25日号)、すでに労働者6000人を2年間で減らすリストラに着手している。
解雇規制法をつくり、多くの労働者に雇用の機会をひろげる真のワークシェアリングをおこなうことこそ雇用安定・雇用創出のたしかな方法であるが、日経連は「報告」でこれをまったく無視している。
ワークシェアリングには言及しているが、あとでみるように賃下げの道具として利用しようというもので、フランスやドイツなどの一雇用創出(仕事の分かち合い)をめざすものとは異質なのだ。
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